笑顔は消えてしまったけど,あの日の笑顔の意味を,ちゃんと理解してなんかいなかった自分は,思い返すことができる。
アップル社は新しいOS「マックOS X 10.2 ジャガー」で,起動時に出迎えてくれる笑顔のアイコン「ハッピーマック」を,落ち着いたグレーで描かれたまじめなアップル社のロゴに置き換えた。ハードウェア・トラブルが起きた際の「サッドマック」や「デッドマック」アイコンについてはどうなったか明かされていない。「ハッピーマックは,真にマックの哲学を表現していた」という声もある。
『作り笑いでない笑顔なんてないと気付いたのは,20歳の秋のことだった。もう子供でもない年になって,そんな簡単なことに気付いたことを恥ずかしくも感じたが,作り笑いとうそ泣きで世の中が回っていると知ったことは,ある意味でやっと大人になれた感じもした。悲しいことなんかぢゃない,それが,いたって普通の「真実」だったんだ。
「今よりもっと大人になってから出会っていたら,もっと違ったかもしれないね」と云ったのは彼女の方だったけど,そう,その真実を知って付き合っていれば,もっとうまくやれていたのもしれない。「ハッピーマック」アイコンも,別にパソコンが喜んでいたわけぢゃない。ただ,その意味をきちんと理解できれば,パソコンと付き合うのは格段にうまくなっていただろう。今になって,そう思うんだ,と,あの日の君に話しかけてみる。』
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